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2023/08/12
【Yellz公式】2023夏の高校野球・注目校にインタビュー
本記事では、Yellz編集部が注目校に独自にインタビューをした内容をお届けします。学校には、それぞれ独自の建学の精神があり、高校野球界で活躍する強豪校はそれぞれの歴史の中で、各校の野球部の文化を創り上げています。2023の夏の甲子園に向けて、注目校の一部に取材した企画の第三弾。福岡の九州国際大学付属高等学校で、副部長の庄司先生に野球部と学校の様子をお聞きしました。
練習の準備も片付けも。先輩・後輩が力を合わせる「全員野球」
野球部に限らず、どんな部活動にも存在するのが「先輩・後輩」という関係性。年長者を敬うことや年少者を導くことを学ぶという意味では、一定の教育的意義があるのは事実でしょう。しかし一方で、ときにそれが過剰な上下関係を生み、問題になることもありました。
いまだ賛否両論がある中ですが、「わが野球部では、そうした昔ながらの体育会系の関係性はなくなってきていますね」と語るのは九州国際大学付属高校野球部、副部長の庄司賢一郎先生です。最低限の上下関係はあるものの、学年を越えた部員同士の仲の良さが同校の強み。練習での器具の準備や片付けも、「下級生がやるもの」といった雰囲気はまったくなく、みんなで協力して行っているそうです。
同校は、今年が9回目となる夏の甲子園出場。プロも熱視線を送る強打者・佐倉侠史朗選手にも注目が集まりますが、庄司先生は「私たちの本当の武器は、そうした全員野球の姿勢。伝統的に『お互いに協力したり、カバーし合ったりするのが当然だ』という雰囲気がありますね」と胸を張ります。
58名の部員、全員が「選手」
いわゆる“強豪”と呼ばれ、多くの部員を抱える野球部では、部内で複数のチームに分かれることが多くなります。レギュラークラスのAチームと、そこを目指す部員たちのBチームです。同校でも同様の体制を敷いています。
合理的な体制ではあるのですが、ネックを挙げるとすれば、Aチームの練習やレベルアップを優先するあまり、Bチームはその補助に回り、満足に練習できなくなる場合があることでしょうか。しかし、同校にそれは当てはまりません。練習メニューこそ違っても、AチームもBチームも、常に自分たちの練習にしっかりと取り組めるのです。前述した「練習の準備や片付けもみんなで一緒に」という行動も、その姿勢の表れだと言えるでしょう。
チーム間の入れ替えも頻繁に行いますから、Bチームの選手たちは常にモチベーションを高く保てますし、もしAチームからBチームへと移動になっても腐る部員はいません。「頑張ってAチームに戻るぞ!」と、ますます練習に熱が入るそうです。庄司先生はこう断言します。「わが部では、58名の部員全員が『選手』ですから」。
エースが戦線離脱、さらに甲子園大会直前でコロナ集団感染が発覚
このような全員野球の強さをまざまざと見せつけたのが、昨年(2022年)の夏です。地方予選中にエースの香西一希選手(現・早稲田大学野球部)がコロナ感染して戦線を離脱。そこで頭角を現したのが背番号11の2年生・池田悠舞選手でした。5回戦以降4試合のマウンドすべてに先発し、見事に甲子園出場を果たしたのです。
しかし、開会式を前にして今度は部内で複数のコロナ感染が発覚。練習は中止となり開会式も欠席、選手2名を急きょ変更することになりました。コロナ陽性となり登録を抹消されてしまった選手は、きっと言葉にできない悔しさがあったことでしょう。それでも「仲間を応援するぞ!」と気持ちを切り替え、代役となった選手も「出られなくなった選手のぶんも頑張るぞ!」と、互いにエールを送り合う関係ができていたそう。大会では、初戦で名門・明徳義塾(高知)を破るなどの快進撃を見せ、ベスト16入りを果たしました。
部員たちと、少しでも長く一緒に過ごしたい
もう一つ、同校野球部の強みになっているのが「負けから学べる」という点です。昨年は春夏連続で甲子園に出場したものの、新チームとなった秋の大会ではまさかの初戦敗退。春のセンバツ出場は叶いませんでした。続いて、今春の九州大会出場権をかけた福岡県予選決勝では、9回に5点差をひっくり返されて敗れるという大波乱に見舞われます。
しかし、庄司先生は言います。「そんなときに強くなるのが彼らです。悔しさを持ち続けると言うか、状態が良くないときこそ頑張れると言うか。その気持ちが発揮できたのでしょう、今夏の地方予選は本当に粘り強く戦えたと思います。甲子園でもその強みを発揮してほしいですね」。
また「このチームで1試合でも長くやって欲しい」とも語り、愛情たっぷりに理由をこう明かします。「私は野球経験者ではなく一人の教員に過ぎませんが、私にとって選手たちは教え子でもあります。しかし、高校というサイクルは3年間。つまり生徒たちとは、長くても3年間しか一緒にいられないんですよね。教え子たちとの夏の甲子園、私も彼らと少しでも長く一緒に過ごしたいんです」。
同校の「全員野球」、それは選手だけのものではないようです。
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